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第3回日本トイレひと大賞

「日本トイレひと大賞」は、トイレ環境や排泄をとおして社会が抱えている課題に取り組む「ひと」を表彰します。「ひと」に光をあてることで、トイレ・排泄の改善に取り組む思いを共有し、「トイレ・排泄」に対する意識を高めていくことが「日本トイレひと大賞」のねらいです。
3回目となる日本トイレひと大賞は7の個人・団体が選ばれました。

第3回日本トイレひと大賞 授賞式の様子

第3回日本トイレひと大賞(2018)受賞者一覧

グランプリ「おもてなしはトイレから。香るトイレで始まるコミュニケーション」
星 清孝 (道の駅「会津西街道たじま」駅長)


多くの人が時間を問わず訪れる道の駅のトイレは、いつ来ても明るくきれいに清掃されていることは当然のことですが、私が管理している東北の玄関口「道の駅会津西街道たじま」のトイレは毎日多くの色とりどりの花で飾っており、会津地方を訪ねて頂いた人々が景色の見えない夜間でもこの地域の季節を感じ、旅情をそそる場所となればと思っています。
 花は洗面台の他、トイレ入り口から男性小便器までいろいろな所に飾っています。これらの花は職員の持ち込みや、道の駅で販売しているものの他、有志の方が提供してくれるものも多くあり、いずれも地元で丹精込めて育てられた花や山野草です。
 この活動は平成22年より続いていて、3日に一回程度花を新鮮なものに交換し、冬場も楽しめるようにアジサイやミスティーブルーなどをドライフラワーにして途切れないようにしています。最初の頃は「花はただ挿せばいいものではない」といったお客様のお言葉を頂戴し、花の扱い方や花の名前を覚えるといった努力が続きました。
その結果、利用したお客様から毎日のようにお礼の言葉や手紙をいただくようになり、会話が広がり、職員のやりがいにも大きく繋がっています。
 今後も花をきっかけとしたお客様とのキャッチボールを続け、トイレ・店舗の改善だけでなく、その素晴らしさが周囲や地域に伝わり、会津全体がおもてなしの心を持った施設づくりに繋がっていくことになれば良いと考えています。

「「トイレに行きたくない」状況をいかに回避するか考える
災害トイレ研究」
岡山 朋子  (大正大学 人間学部 人間環境学科 准教授)

 災害によって停電・断水するとトイレの水が流れなくなり、水洗トイレが使えなくなる。一方、熊本地震の被災者を対象とした調査では、発災後6時間以内に73%の人が「トイレに行きたくなった」と答えている。人は空腹を我慢できても、排泄を我慢することはできない。つまり、発災後6時間を目安に使用できるトイレを確保することは、災害対応の初動において極めて重要である。そこで、「災害時にも平常時に近い環境の排泄を可能にするには、市民と行政において、どのようなトイレの備えと対応が必要か」をテーマに、災害廃棄物の減量と迅速な処理の観点から、日本トイレ研究所の協力を得て調査研究を行っている。
 近年の災害においては、発災後すぐに行政が仮設トイレ調達を行うが、発災当日の調達は難しい。例えば、熊本県および熊本市は前震直後に仮設トイレの調達を始めたが、全体に行き渡るには平均で約2週間かかった(熊本県31自治体への調査より)。屋外に置かれる仮設トイレには使用上の問題も多い。そこで、停電中で水が流れない屋内のトイレを、便袋と固化材(携帯トイレ)を利用して使うことを提唱した。しかし、浦安市や宇和島市吉田町の携帯トイレ使用状況などを調査し、携帯トイレにも使用上の問題、集積や収集などに関する課題が多くあることがわかった。今後は、これらの課題を解決する方法、どのようなトイレミックスと備蓄を行うかを検討、検証する。
 なお、これらの研究結果は、講演会や講習会、講義、学会発表、その他の機会を得て公表、市民および行政の災害時のトイレに対する意識の涵養と、携帯トイレなどの備蓄実施を促している。

「水を使わないトイレの「使い方体験」をすべての人に!」
減災チーム・トイレの備え

 水を使わないトイレの使い方を体験する「携帯トイレトレーニング(以下、「携トレ」)」のコンテンツ提供および実施サポートをしています。累計体験者数1万人を目標に掲げ、8,928人(10月7日現在)が体験しました。
 代表の長谷川高士は「あなたの排泄の選択肢に携帯トイレを加えてください」とセミナーで訴えます。「知らないこと」「使えないこと」が問題の本質であることを伝え、「携トレをやりたい人」の心に火をつけます。日に日に増える「やりたい人」に教え方、運営、備品手配などを伝えて、全力で実施をサポート。東海3県はもとより京都、広島、兵庫、愛媛、北海道、神奈川、東京と全国に拡がりはじめました。
 さらに自治体、企業、地域、商業施設、学校など、携トレができる新しい場所を開拓し、やりたい人がすぐに取り組める環境を整えています。特に学校では教職員が授業として携トレに取り組む方法の実証実験が始まり、その可能性は大きく開いています。
携帯トイレトレーニングはプロジェクトです。ここに関わる人すべてがメンバーです。人のつながりで全国のトイレの備えが前進します。いつも、どんなときも排泄に自由であること、すべての人が生きること。これがプロジェクトの唯一の目的です。

「集合住宅の在宅避難のためのトイレ使用方法の検討とガイドラインの策定」
集合住宅の在宅避難のためのトイレ使用方法検討小委員会
(公益社団法人空気調和・衛生工学会住宅設備委員会)


 本学会は空調や衛⽣設備などを扱う学問領域で活動する学術団体です。しかし,機械設備だけではできないことがあります。その一つが,「震災時における集合住宅のトイレの適切な使用」です。たとえ免震建物であっても,断水したり排水管が閉塞してトイレが使えなくなっては,在宅避難することが難しくなると推測されます。  
 一般に,「大地震が発生したら,設備を点検して問題がないことを確認できるまでマンションのトイレは使わないようにする」と言われています。しかし,誰が点検するのでしょうか? 専門業者は直ぐに来てもらえるでしょうか? 点検までトイレはどこでしたらいいのでしょうか? あるいは,点検後,誰が「使っていい」と判断するのでしょうか? 万一事故が発生したら誰が責任をとるのでしょうか?
 これらの課題を乗り越えるには,事前に全居住者の合意の下に,震災時のトイレの使い方ルールを決めておくことが重要です。震災時に排水設備の二次被害を拡大させないこと,排水による事故発生を最小限に留めること,そのためには,住民全員が合意できるようなルールを決めなければなりません。
 そのルールは,マンションの建設年次や,排水設備の施工状態,管理形態,代替源の有無,下水道局の指導等,様々な要因によって,マンション毎に異なってきます。また,住民全員が合意できるようなルールを決めるには,「誰でもが納得できるような根拠」が必要です。排水設備の位置などは調べればわかりますが,防災担当者が最も悩むのは,皆が納得できるルールではないでしょうか。本小委員会では,実際にマンション管理組合と対策フローを作成する中で,ルール策定に関わる様々な問題を見つけ,それを基に,他のマンションで対策フロー,ルールを策定するための,実効性のあるガイドラインの作成を目指しております。
 そして,本活動で最も重要なのは,この検討成果をどうやって広め,使っていただくかです。今回,大賞に選んでいただいたことは,まさに時機を得た,願ってもない機会であります。来年度はガイドラインの取り纏めに入ります。この活動が,集合住宅に住む方々の役に立てばうれしく存じます。

「10年間にわたる継続的なトイレ美化の取り組みとトイレ分野の
技術レベルの向上」
中日本高速道路株式会社 東京支社

 中日本高速道路㈱東京支社は、2005年に日本道路公団から民営化して以後、休憩施設(SA・PA)を利用されるお客さまに喜ばれる快適なトイレ空間の提供を目指し、高速道路会社の中でも先駆者として「トイレ美化」の取組みをリードしてきました。2008年には、トイレの前室であるロビー空間の設置など、新たな提案を反映した日本平PAトイレのリニューアルを完了させ、その後も10年間にわたり、他20箇所のトイレのリニューアル事業にてロビー整備を完了させるなど、「より快適、より便利、より楽しい、より美しい」トイレの実現に向けた取り組みを継続的に実施ししています。
 これらの活動を、各種データ(トイレ利用のログデータなど)に基づく学術的なアプローチで研究分野にまで突き詰めて検討するなかで、結果として、10年間で28編(内査読付論文4編)のトイレ分野の技術論文を投稿して、トイレ分野の技術レベル向上に寄与しました。特に、東京支社で開発した「最適ブース数の算定手法」については、2015年にNEOPASA清水のトイレを対象として日本トイレ大賞(国土交通大臣賞)を受賞しました。
 これらの取り組みについて、各業界(UR都市機構、東北地方整備局、JR東日本、小田急電鉄等)からの問合せ等に積極的に対応し、情報提供することで、公共インフラ全体におけるトイレ美化に貢献しています。

「マンホールトイレの啓発活動 【イベントで普段使い】」
宮城県東松島市工事検査監兼危機対策専門員 小田島 毅

 東日本大震災で使用したマンホールトイレは、聞取りにより検証し、女子生徒の貴重な意見等を参考に、これまでに施設の改善を行いながら、整備を進めてまいりました。 マンホールトイレに関する啓発活動は、下水道デーによる展示や下水道課のホームページ。毎年行っている総合防災訓練で、自主防災会による組立て訓練と使用方法について説明を行ってきました。しかし、実際には使用していないことから、啓発活動としては物足りなさを感じていました。そこで、「見て触る」から「使う」というコンセプトに転換しイベントで使用することとし、関係団体等と調整しました。その結果、平成29年度は、4回のイベントで設置することができ、約580人が利用、151人からアンケートを回収しました。
 実際に使用することで、使用方法等の訓練になりマンホールトイレの啓発活動が促進されます。併せて下水道ブースを設置し、トイレの啓発パンフやマンホールカードの配布、下水道クイズや何でも相談コーナーを行うことにより、下水道への理解を深めることができると考えます。
 今年度以降も、アンケートの内容を検証し、施設の更なる充実を図りながら、イベントで使用することで、多くの市民に利用していただけるよう、日程等調整しております。さらには、小中学校の運動会で使用することで、子供達からお年寄りまでの訓練になると考え、学校と調整し実現してまいります。 
 最後に、本市で使用している施設形式では、使用後の清掃に特別な器具を必要としないことから、簡単な清掃で済み安価に使用できることから、継続的に活動することの利点となっております。

「災害前に考えるトイレの備蓄」
 山田 葉子(一般社団法人キャンナス東北/東日本大震災語り部)

 東日本大震災の時、一番大変だったのはトイレでした。避難した宮城県石巻市渡波小学校体育館では、周囲を2メートルの波が押し寄せていて、施設内のトイレも逆流してきていて使用できず、体育館ステージ脇に暗幕を使用した簡易個室を作り体育館内にあった衣装ケースをトイレとして使用。暗幕の開け閉めなど避難者の一部の人が対応している中で、安定性のない衣装ケースで用を足す不便さと恥ずかしさ、バランスを崩した時に汚物に落ちるかもしれないという不安さの中でのトイレ使用はとても辛い経験になりました。津波が引いた後も地盤沈下や配管の問題で施設内での使用が出来ず、避難所が閉鎖されるまでの7か月間は屋外に設置された仮設トイレを使用することになりました。
被災時に何が一番大変だった?と避難所で生活した人に聞くと皆さん「トイレ」と言われます。在宅被災者に聞いても同じように「トイレ」が大変だったという方が多かったです。
 災害前の備蓄では水や食料に目が行きやすいですが、飲食は我慢が出来ても我慢できないのは「トイレ」です。一口に「トイレ」と言っても人によって必要とされるトイレ・使用しやすいトイレが違うという事に避難所運営をしているときに気づきました。避難所閉鎖後にはトイレを事前に備蓄することに関心がない方が多いことに気づき、災害時の自分が使用しやすいトイレの備蓄を考えることの大事さを、被災体験をもとに伝えています。

「日本トイレひと大賞」歴代受賞者

第1回日本トイレひと大賞(2016年)
受賞者一覧

第2回日本トイレひと大賞(2017年)
受賞者一覧