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第2回日本トイレひと大賞

第2回日本トイレひと大賞

11月10日の「いいトイレの日」に先立ち、日本トイレ研究所ではトイレ環境や排泄をとおして社会が抱えている課題に取り組む「ひと」を表彰いたします。 第2回となる「日本トイレひと大賞」は、地方自治体の職員、企業、団体、学生等、幅広い方々からのご応募がありました。 審査員(理事・アドバイザー・向上委員)による投票の結果、団体を含む10点が選ばれました。受賞された10点の活動をご紹介します。

第2回日本トイレひと大賞(2017)受賞者一覧

グランプリ「Better Toilets to Save Your Lives」
谷口 智海(鹿児島県立甲南高等学校3年)

 高校の総合的な学習の時間における課題研究で,日本の災害時におけるトイレ問題に焦点をあて,「災害時にすべての人々が衛生的なトイレを利用できるようにするためには何が必要か」という問いをもとに研究を行った。トイレは,誰もが必要とし,過去の災害時においても問題視されていながら,災害大国日本で,トイレの必要性を自覚し,備えている人は少ない。この状況に危機感を覚えた私は,意識向上のため可視化した形での備蓄が有効だと考え,日本国際飢餓対策機構のハンガーゼロ自動販売機横に設置される備蓄ボックスに携帯トイレを備蓄することを提案した。現在,甲南高校や鹿児島の企業とも備蓄ボックスの設置検討中であり,甲南高校では,別に簡易トイレの災害用備蓄を始める予定である。
 また,研究内容を様々な場面で発表する機会を得た。2月に行われた全国高校生国際シンポジウムや「知事と語ろう未来の鹿児島」で発表,3月には甲南高校の海外研修プログラム「学びにUK」に参加し,イギリスを訪れ,オックスフォード大学の学生との意見交換をした。また,7月には和歌山県で開催されたアジア・オセアニア高校生フォーラムに参加し,各国の高校生と議論した。プレゼンテーションはすべて英語で行い,日本人だけでなく海外の人々にもトイレ問題やトイレの重要性を訴えてきた。これらの活動を通して,高校生の私にできる,啓発活動を最大限行ってきた。

準グランプリ「世界中のお客様にきれい!と言って頂けるトイレ空間を提供!!」
羽田国際線ターミナルビル 維持管理センター

 私たち、羽田空港国際線ターミナルビルは首都圏の空の玄関口として、24時間365日休むことなく航空輸送拠点の役割を担っており、その快適性・安全性を提供しているのが維持管理センター清掃スタッフ192名です。(2017年10月現在)
 常にお客さまが絶えることがない施設のため、トイレはエリア毎に一時閉鎖した上、メンテナンス時間を確保しながら清掃を行うのはもちろん、運用時間中においても、利用者の合間を縫って限られた時間内にスピーディーな清掃作業に当たっています。その際は利用者に不快感を与えぬよう、お客さまへの声掛けや、急ぎのお客さまへの丁寧なご案内を心掛けています。広い空港内ではトイレの汚れについて空港職員等から通報があれば、速やかに巡回清掃員を派遣し対応することで清掃品質を保つシステムとしています。また、空港は多くの人が行き交い、注目される施設でもあるため、諸外国においてはテロの標的にされる場合も少なくはなく、トイレ個室内不審物検索、ごみ箱の内容検索に協力し、スピーディーな安全確認の一翼を担うなど安全の確保にも貢献しています。世界各国から日本を訪れる方たちに日本のトイレはきれいだ!と言ってもらえるよう、おもてなしの心をもって日々の清掃に取り組んでおります。

「長崎・トイレ案内板(公衆トイレ内の設備を調査)」
豊福和範(社会福祉士(第107292号)、介護福祉士(第D-581451号))

 福岡市出身の私は福岡県久留米市にある児童養護施設に9年間勤務してきました。平成17年結婚を機に長崎市に引越しして来ました。翌年から現在まで高齢者通所介護施設に勤めています。ここで外出行事を計画する時は、洋式便器を調査する事を学びました。
 私生活では2児の父親になりました。育児をする中で1番大きな問題が外出先でのオムツ交換でした。当時の長崎市内で男性が利用できるベビーベッドを探すことは困難でした。
 平成25年に脳梗塞を発病し、リハビリを経験しました。リハビリ室にある2つの多目的トイレを見て、ある日は一方のトイレで行列があり、別の日にはもう一方で同様の事がありました。観察すると麻痺している患者とL字型手すりの関係に問題がある事が解りました。
 このような経験から公衆トイレ内の設備についての情報が必要であると確信しました。
 長崎県は観光を通して経済活性化を進めています。しかし、そこに身体的なハンディキャップを持った方に対する「おもてなし」は見えてきません。この問題は長崎県だけでなく日本全体の問題であって、今まで見てこなかった陰の部分です。これからの私は、公衆トイレ内の設備に関する情報の重要性を健常者社会に訴えていきます。

「TOILET ART PROJECT」
美術家/ 邊 薫(Kaoru Nabe)

 TOILET ART PROJECTと名付け発起人である邊薫の実体験を元にこの個人的なプロジェクトは動き出しました。トイレという場所を表現の舞台にし活動していく事によってその現場を通して時々思いもよらぬ形で出会う人・場所というのは、限られた個室空間という概念を越えて表現と生活を同じ土俵の中で自由に行き来できる価値あるものだと思っています。
 一般の家庭から店舗トイレなどそれらの空間を表現の舞台とし、見慣れた空間がただ綺麗なだけではなく作品としても様変わりした後のトイレは一気に表情が変わり、使用者も丁寧に・そして持ち主は空間を綺麗に維持する心がけを持つようになるというシーンを目にしてきました。 こういった活動を行なっている事を発表しもっと多数の方々とシェアする事ができたらと思います。また、これをきっかけに新たなトイレアートプロジェクトの現場や関心ある方たちと出会える事もできましたらとても嬉しいです。 今後の質の向上の為に、ただただトイレでアートするという表面上の響きだけではなく個室から外部へとコネクトさせてゆけるような、各現場で感じ取る「何か」を掘り下げ、表現へと繋げ大切に使用し続けて頂ける空間を制作していきたいと考えています。

「まちぐるみで取り組むICO(イコ)いこトイレ対策」
ICO(イコ)いこトイレすすめ隊 (茨木市 危機管理課)

 茨木市(Ibaraki City Office:ICO)では、平成29年度をトイレ対策元年とし、市と地域、住民が一緒になって、いざという時のいつでも(I)、心地よく(C)、思いやり(O)トイレ[ICO(イコ)いこトイレ)]を目指し、災害時のトイレ対策について学び、考え、取り組んでいます。
 市では、防災対策の重要な「ひと」である市職員の防災研修のテーマに「トイレ対策」を取り上げるとともに、地域では、地域防災対策の担い手の要である自主防災組織を対象に、女性防災リーダー育成研修や防災士研修の中で、「トイレ対策(衛生対策)」を活動テーマの一つとして取り上げ、災害時のトイレ対策の重要性と日頃からの備えの必要性を啓発しています。さらに、各地域での自主防災組織主催の防災訓練で、トイレ対策の啓発や実践的な訓練ができるよう、防災士や女性防災リーダーとともに、自主防災組織に対して支援を行っています。
 このように、市の防災対策を担う様々なひとに、それぞれのひとができるトイレ対策を伝え、訓練等の実践を行うことで、まち全体として、災害時のトイレ対策意識の向上を図り、いざという時に困らず、いきたくなる快適なトイレ環境が保たれるよう取り組み[ICO(イコ)いこトイレ]を進めています。

「トイレと共に「排泄」を支え続ける~下水道とオムツ」
下水道・LIFE・えんじん研究会&下水道女性キャリアチャレンジ勉強会

 歳を重ねると排泄のコントロールは難しくなります。超高齢社会で介護施設や介護人材の不足、自宅での老々介護や単身高齢者の増加などが予想される中、自宅で自分らしく生きるためには排泄の上手なコントロールは重要です。トイレ使用にパットやオムツを組み合わせるのが有効ですが、課題はその処分。それまではトイレ+下水道が直ちに受け取っていた排泄物は、オムツやパットを使えばゴミとして住空間に溜まります。臭気や重いゴミ出しは辛いですし、介護者にとっても大きな負担でしょう。
 住宅・トイレ・下水道などの仕事に関わる女性たちが集まり、排泄物処理の悩みを少しでも軽減したいという思いで1つの提案をまとめました。「体や環境にやさしいオムツやパットを、家庭内で分離・溶解・粉砕等する技術によって水と一緒に流せる形に変えて下水道に流し、下水処理場等で汚泥として取り出し消化ガスや固形燃料などに変え、発電などに利用する」システムの実現です。実現すれば、エネルギーの地産地消にも貢献できる可能性があります。住宅や下水道の仕事に関わるプロであると同時に、生活の中で日々衛生用品と付き合いトイレや介護の悩みをより身近に感じている女性たちが集まったからこそ生まれた、全く新しいアイデアです。我々は、提案実現のために、さまざまな行動を続けていきます。

「失禁体験装置」
失禁研究会

 私たち失禁研究会は国立大学法人電気通信大学の有志学生により結成された団体です。失禁研究会では尿失禁の感覚を再現、提示する装置の開発を行っています。私たちが生きるために排泄は必要不可欠な行為です。しかしながら、現代社会では排泄とは秘匿されるべき、ともすれば忌諱される行為ですらあります。しかし現実にはこの排泄に関する問題で苦しむ人々が数多く存在します。そういった問題の解決の糸口となるべく本装置の開発を行いました。
 本装置は腹部(膀胱付近)への空気圧による圧迫機構と股間部から足先にかけてお湯による温感の提示により尿意と排尿感を伝えます。ほかにも首筋への振動と冷感の提示により排尿時の悪寒を感じさせたりするなど細かな演出を用いでより失禁感覚を感じやすくしています。
 現在、潜在的に排尿の問題に苦しむ方々は数多く存在します。しかし、その問題が表面化するまでには時間を要する場合が多いです。理由として問題を抱える方と周囲の人間との意識の乖離が挙げられます。そこで本装置を使い尿失禁の辛さ、苦しみを共有することで相談しやすい環境をつくり、より配慮の行き届いたケアを行うことを想定しています。

「性的マイノリティのトイレ問題を解決したい!」
特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ

 LGBT等の性的マイノリティ、特にトランスジェンダーの方は、男女に分かれたトイレに入りにくい、トイレで周囲の人から見咎められる、それが怖くて学校や職場で排泄を我慢してしまう等の問題を抱えています。トイレに行けないと、勉強も就業も難しくなります。私たちはこの問題を解決するため、企業や行政と共に、社会の啓発を行なっています。2015年末にLIXIL様と共同研究を実施し、その結果を2016年に公表。そのデータを用いて、企業や行政に対し研修を行いました。私たちの働きかけもあり、男女共用のトイレに性的マイノリティへの配慮を示すために虹のマークや「ALL GENDER」等と記載するトイレが増え、新聞等でも取り上げられました。しかし、「LGBT専用トイレ」等と誤解されるような表現もあり、ハードだけではなくてソフト、社会的な理解の増進も必須である、という思いから、2017年7月に、港区の男女共同参画センター・リーブラにて「性的マイノリティとトイレ・フォーラム」を開催し、満員御礼となりました。まだまだ社会的な理解が足りないLGBTですが、誰もが関わるトイレの問題を一緒に語ることで、多くの人の共感を得ることができ、他の課題の解決にも繋がるのではないか、とも期待しています。

「市内全域に広がる災害時のトイレ対策の必要性!」
静岡県三島市

 三島市では市民啓発の重点テーマの一つに災害時のトイレ対策を位置づけ、自主防災組織リーダー研修会では「災害時のトイレ対策」を全8回開催し、各団体から4名ずつ全141団体のうち123団体、432名(うち女性107名)の方に参加いただきました。内容は、座学のあと、実技では、各グループに分かれ簡易トイレを配置し、廃棄予定の備蓄食料に芳香剤で匂いをつけ作成した仮想大便と、絵具で黄色く着色した水を仮想小便として、携帯トイレによる汚物処理を実践しました。便器に携帯トイレのビニール袋を被せ、仮想大便とともに、キャップに穴をあけたペットボトルから仮想小便を流し入れ、凝固剤をふりかけて、凝固と消臭効果を確認しました。また、携帯トイレのない場合も想定し、市指定のごみ袋を便器に被せ、ペット用の砂の凝固と消臭効果も確認しました。トイレ対策を市内全域に広めるべく、当研修会の最後には、市所有の簡易トイレの貸し出しと携帯トイレ、廃棄予定の備蓄食料の支給を紹介し、秋の自主防災訓練で実践していただくよう依頼しました。さらに、誰でも説明できるよう、三島市ホームページ(ユーチューブ)にて実施方法の動画を公開し、誰でも説明できるようにしました。また、市職員によるトイレ対策の出前講座も実施しています。その取り組みの結果、昨年度まで自主防災訓練でほとんどトイレ対策を実施していませんでしたが、今年度、約25団体でトイレ対策の訓練を実施する予定であり、災害時のトイレ対策の裾野が大きく広がりました。

「災害時トイレどうしようin蕨」
蕨市災害時トイレ&下水道を考える会

1、主な目的~自助・共助・公助の一体化を推進し、災害時トイレの確保と下水道対策についての市民啓発事業を推進する。
2、主な活動事業として
〇避難所・避難場所(学校、公民館、福祉避難所、公園等)のトイレや放流先下水道等の実態調査、総点検、設備向上などを図る。
〇要配慮者(含む外国籍住人)等の実態調査と避難行動支援、トイレ確保の推進。
〇啓発事業として各分野の専門家、被災体験者等による講演、ワークショップ等を開催して意識向上を図る。
〇避難所の学校を中心にマンホールトイレ、仮設トイレの推進と、青少年リーダーの育成を図る。
〇自治会、マンション、事業所等の連携を図る。
〇その他、目的達成に必要な活動を行う。
3、28年度主な活動事業
 トイレの実態調査、管路オリエンテーリング、埼玉県荒川水循環センター見学会、シンポジウム「災害時のトイレどうしょう!in蕨」の開催、個別町会への講演活動(4回400名)、アクティブシニアの社会参加支援事業への協力・見本市出展PR、その他わらび市民ネット、防災ネットワーク、国際交流・外国人支援ネットワーク等に参加。